人の皮膚が直接触れる部分の素材は自然由来のものが気持ち良い。
肌着はコットン素材が圧倒的に多いし、シルクなども悪くない。
肌触りの心地よさと調湿性は感覚的にも機能的にも理にかなっているのだろう。
建築で直接肌に触れるものといえば、便座や浴槽。
木の便座や檜の浴槽など肌触りの良いものも無くはないが、機能性には替えがたくプラスチックのものが当たり前になっている。
お尻がちょっとべたついたとしても我慢の範囲内とあきらめている。
問題は床材である。
個人的には、自宅では「スリッパ履かない派」なので、足裏の感触はとても気になる。
特に暖かい時期は素足ほど気持ちの良いものはない。
素地の木の床やたたみの上を素足で歩ける幸せ。
カーペットの優しさも捨てがたい。
他にもココヤシや籐・竹等を使った床材は五感に訴えてくるものがある。
ところが昨今の住宅では、メンテナンスフリーやクレームレス、偏った健康志向などから、自ら材料の選択肢の巾を狭くしてしまっている。
残念なことに素足が心地よいとは感じさせてくれない床材が多く使われるようになってしまった。
極薄表面材の摩耗を防ぐ強力樹脂コーティングがかかったフローリング。
木目を立体的にプリントしたビニル床シート。
見た目だけは「木」なのだが最も肝心な木の床の美点、調湿性や足触りの良さを忘れてしまっている。
もっとも「スリッパ履く派」にとっては見た目だけで十分満足なのも分からなくはない。
だって「木の床」ではなく「フローリング」を望んでしまっているわけだから、、、。
決まりきったデフォルトの設定をリセットしてみない限り本当の我が家のイメージは浮かび上がってこないような気がする。