藤田美術館

ほんとに質素なたたずまいです。

大阪の藤田美術館に行ってきた。
施設建て替え前最後の展示という事もあって、国宝の「窯変天目茶碗」をおがんでおこうかなと。
単に目の保養にとの発想でおとずれたのですが、結果いろいろ考えさせられることに、、、。

まず、今回の展示内容は出色でした。
ほとんどが国宝か重文。私設の美術館として、これだけの「文化財」を所蔵している事に驚愕です。
パンフレットの説明によれば、
「藤田傳三郎は、明治維新後の廃仏毀釈などの影響から、歴史的な仏教美術品の数多くが海外へ流出していることに憂慮し、これを阻止するために膨大な財を投じました。」
との事。
西欧化に邁進したこの時代に日本の古美術の価値をはっきりと認識していた事におどろかされます。
建築もそうですが、日本建築の美しさや価値は海外の研究者によってみいだされた歴史をもっています。
ブルーノタウトやノーマンFカーヴァ。
当時の日本の人々にとって見なれた日本建築の形や空間が、実はひとつの芸術作品であるとはなかなか気付けなかった時代です。

一方この美術館、収蔵品のすばらしさに比べて展示施設がほんとに質素なのです。
展示室は2階建の蔵1棟、40坪位の広さしかありません。
それをなんの変哲もないモルタル塗りの洋風建屋で覆って、蔵との隙間を受け付けや事務室としています。
入場料も800円と超良心的なお値段。

この春、オークションで中国関連の美術品30点を300億で売却との報道は記憶にあたらしいところです。
確かにこの質素すぎる展示施設を建替えなければならないという事情は十分理解できました。
おそらく中国マネーが落札するだろうとの予測のもと、売却された美術品がオリジナルな場所に戻るという事も考慮されていたのだと思います。
傳三郎翁の意志を確実に受け継ぐかたちで。

これも美術品として保存しようと自分の庭に移築したのだそうです。


プラットホーム

何気ないこんな空間に惹かれてしまう。
小さな鉄骨部材をサクサクと組み合わせただけのいたって合理的な構造。
それに絡まるトップライトからの縞々の光が魔法をかける。
全体の明るさも丁度いい。
駅ビルにしちゃうとこうはいかない。
終着駅なので、いちばん端っこからの風景になるのも良い。
大阪・天王寺駅の阪和線プラットホームでした。

ひるがえって、新しい新潟駅のホームはどんな空間になるのだろう。
確か在来線も最上階に乗り入れる計画だったと記憶している。
どんな光のマジックを考えているのだろうか。
期待と不安が交錯する。

竹中大工道具館

日本建築にかかわる匠の技の数々。
大工道具をとおしてそれらを未来へ継ないでいこうという展示館です。
そもそも大工道具なんて展示品になるのかいなと思っていたら、なんのなんの。
鉋、鑿、墨壷などなど、「良い仕事」をささえる「良い道具」はそれ自体とても美しいのです。
硝子ケースの中でスポットライトをあびた姿は、宝石や美術工芸品のように見る者をひきつけます。
道具をつくる技とそれを使って建築にしたてる技。
こころざしある優秀な職人が激減している今の建築の世界。
ふたつが一体となって未来へつながるのが理想なのだけれど・・・。

硝子ケースのなかは、鉋、鑿、鋸。
道具たちのホンネは、現場で働かせてといってるのでは。
かんなくずではなく「削り華」というそうな。
これで削った「はなかつお」。さぞや良いダシがとれそう。

一方、建物自体もみどころのひとつになってます。
たたずまいはおだやかな平屋の和風建築にみえますが、実は現代的なデザインと構法に匠の技を融合させてつくられています。
伝統をつないでいくには守ってばかりでなく、逆に新しい事に挑戦しつづけなければならない事の実践として。

道具と技の痕跡。
名栗仕上のエントランスドア

ティータイム

京都の「とらや」でお茶してきました。
「ようかん」と「くうかん」の相乗効果でリフレッシュできます。
普段のお茶の時間も、こんなふうに丁寧にすごせたらと思う。
お気に入りの場所でお茶菓子と共に。

話はさかのぼって、新潟へUターンしてきた時期にうれしかったことのひとつ。
こちらではお茶やコーヒーといっしょに何らかお茶菓子を出してくれる人がとても多い。
ちょっとした用件で伺った時でも、2杯3杯と長居をしてしまう。
あたりまえの習慣として自然とうけつがれている事に感動。
住宅の現場でもしかり。
大工たちは「いっぷく」の時用に、ちゃんとお茶菓子も用意している。
大切にしたい「文化」のひとつです。

お湯と急須が別々に出てくるので、3杯くらい楽しめます。
コーヒーのおともにこれ意外と合います「たなべのかりんと」

空中エキナカ広場

もう一つ関西ねたです。
JR大阪駅のホームの上に出現した空中エキナカ広場。
線路をはさんで両サイドに分断されていた百貨店を地上6階レベルの広場でつないじゃう。
これって結構大胆です。
屋根のデザインはネタバレぎみですが、線路方向にスカーッと視線が開けるので新鮮な空間が体験できました。

電柱

六甲山裾の住宅街散歩であらためて実感しました。
電柱と電線がなんと邪魔な事か!
美しい街並になればなれほど、逆にめだっちゃうんですね、困った事に。

これは、「目神山12番坂」。
建築家の「石井修通り」といえるような氏の住宅が集中する場所なのですが、ほんとになんとかならんのでしょうか。

一方こちらは、阪急芦屋川駅周辺の何のヘンテツもないように見えるまちなみ。
でもここ、とても良いです。
川と山と緑があり、道路・歩道の巾と沿道の建物の高さの関係が絶妙で、おまけに電柱なし。

F.L.ライトとポルシェ

私用で大阪へ出かけた折、六甲山裾の住宅街を散歩してきました。
目的のひとつは、F.L.ライトの「ヨドコウ迎賓館」。
実にライトらしいすばらしい建築です。
詳しくは http://www.yodoko.co.jp/geihinkan/

最近こういう見学をすると近現代建築の保存の事に頭がいってしまいます。
この建物は幸い??国の重要文化財の指定をうけているので、大規模な保存改修が実施されています。
しかしそういった物はごく少数で、さきの東京(大阪も)郵便局や虚白庵(白井晟一邸)など、保存する価値のあるものでも、経済的な環境がそれを極めて困難にしているという現実は、なんと悲しいことか。

帰りみち、立ち寄ったパン屋のカフェ。
それらしい色のビンテージポルシェが店の前にとまりました。
途方も無い維持費がかかっているはずですが、乗り続ける崇高な精神。
かってにビンテージ建築の話と同調させつつ、まだまだ火はきえていないよなと。

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