「ビッグスワン」ってどう?

今般の国立競技場の騒動で、ひとつ良かったかなと思う事がある。
それは、スタジアム建築のような巨大構造物のデザインが、居酒屋談義として誰でも話せるみじかな話題にのぼった事。
純粋に建築としての美しさや機能性、歴史や周辺環境をふくめた総合的な計画の意味などをかたっていたわけではないにせよ、少なくとも建築のトピックが、(切り口については横においとくとして)連日のようにメディアでも語られつづけた例はいままで記憶になかった事である。

そんななか地元新潟のビッグスワンスタジアムはどうだろう。
Jリーグの発足から2002年のW杯の開催を経て、日本国内にも多くのサッカースタジアムが建設されてきた。
それまでの陸上競技場と大きく異なるのは、観客席の大部分が屋根で覆われている事。
まさに「スタジアム」と呼ぶにふさわしい建築物なのである。

最初にビッグスワンをみたのは確か2001年のコンフェデレーションズ杯のとき。
その時は新幹線の車窓からみえてきた姿に、その巨大さゆえ好印象はもてなかった事を覚えている。
しかし、実際に地上レベルから近づいていくと、全然違う感覚に変わった。
威圧感のようなものは感じられない。
広大な公園計画の中のロケーションの良さや、幕屋根の軽さ、基壇部分のみを垂直面とした配慮など、設計者の手練れを感じる。
なかなかどうして、少なくとも日本のスタジアムの中では優れたデザインのひとつにかぞえられるのではないだろうかと。

一方、世界ではスタジアム建築Best10などといった公式・非公式なコンクール等も行われているようだ。
建築的なかっこよさ、サッカー観戦空間としての質に対してランキング付けをして楽しんでいる。
それだけ建築もサッカーも文化として根付いている事の証しなのだろう。
おくればせながら日本のサッカースタジアムも量から質の時代をむかえ、サッカー専用スタジアムの臨場感はなにものにもかえがたいとの声が高まっている。
ビッグスワンがもし陸上トラックのないサッカー専用であったなら、、、
おらがチームのホームスタジアムとして堂々と世界に自慢したいところなのだが。

ペーパークラフト:世界レベルのスーベニア

石造のまち

ヨーロッパではありません。

光の加減でちょっと雰囲気がでてますが、実はここ、小樽です。
にぎやかな観光スポットとは反対方向の、やや過疎ってる地区の写真です。
写ってる建物、石造のように見えますが、小樽の倉庫は木骨石造という構造なんだそうです。
木造の骨組みが基本で、その外側に石積で外壁をつくるというもの。
当時、倉庫に求められた最大の機能のひとつは、火災による延焼から荷物を守る事。
一般的にはレンガがつかわれていますが、ここ小樽では地場で産出する石材を用いています。
それが日本らしくない独特の街並を形成するもとだったのですね。
「地の材料を活かす」これやっぱり建築におけるひとつの基本です。

歴史的な建物が保存されているまちに来るといつも思います。
以前のブログにも書いてますが、古い物を大切に使いつづける事の大変さと意味。
かっての小樽は、明治・大正の時代をとおして横浜や神戸に次ぐ港湾都市として繁栄していました。
実際、札幌(幌内炭坑)と小樽を結ぶ鉄道は日本で3番目に開通した路線だそうです。
が、ごたぶんにもれず経済性と利便性を追求する時代を経て、ここでも当初の役目をおえた建物が増えてゆきます。
また、運河を埋め立てて道路化する計画なども進められたようです。
しかし、それらの洗礼をうけながらもかっての姿をとどめる小樽の街並。
不遇の時代にあってもその価値をみいだし、大切な遺産としてうけついでくれた人たちの、なみなみならぬ努力に敬意を表します。

竹中大工道具館

日本建築にかかわる匠の技の数々。
大工道具をとおしてそれらを未来へ継ないでいこうという展示館です。
そもそも大工道具なんて展示品になるのかいなと思っていたら、なんのなんの。
鉋、鑿、墨壷などなど、「良い仕事」をささえる「良い道具」はそれ自体とても美しいのです。
硝子ケースの中でスポットライトをあびた姿は、宝石や美術工芸品のように見る者をひきつけます。
道具をつくる技とそれを使って建築にしたてる技。
こころざしある優秀な職人が激減している今の建築の世界。
ふたつが一体となって未来へつながるのが理想なのだけれど・・・。

硝子ケースのなかは、鉋、鑿、鋸。
道具たちのホンネは、現場で働かせてといってるのでは。
かんなくずではなく「削り華」というそうな。
これで削った「はなかつお」。さぞや良いダシがとれそう。

一方、建物自体もみどころのひとつになってます。
たたずまいはおだやかな平屋の和風建築にみえますが、実は現代的なデザインと構法に匠の技を融合させてつくられています。
伝統をつないでいくには守ってばかりでなく、逆に新しい事に挑戦しつづけなければならない事の実践として。

道具と技の痕跡。
名栗仕上のエントランスドア

見学会を開催します

寺泊旧市街での建て替えプロジェクトが竣工します。

独特の長屋スタイルのまちなみで、海と街をつなぐ超細長敷地。
海側・街側の敷地段差を利用して、風と光がとおりぬけていくような家を意図しています。

杉のトンネル(オープンハウス)

オープンハウスの告知です。
加茂市下条地内での「離れ」の増築計画が竣工します。
最小4m巾の敷地に、トンネル状のリビングをつくって、既存の庭からデッキテラスへつながるような空間としています。
開催は4月25日(土)からの4日間。
25(土)と26(日)は10時から16時までOPENしています。
また、27(月)と28(火)は事前に時間の予約をお願いします。
ご来場お待ちしております。

増築効果

このぐちゃぐちゃしたかたち、Frank.O.Gehryではありません。
増築っておもしろいな~という話。
母屋の竣工から3年と、短い期間での増築計画だったこともあって、オリジナルを尊重しつつ、総体として生まれ変わろうという思い。
ちょっとだけややこしいかたちを添えただけで、建築全体の印象は随分かわるものです。
住み続ける意思を保つ意味でも、家にときどき手を入れて我が家と楽しくつきあっていきませんか。

増築後
増築前

ティータイム

京都の「とらや」でお茶してきました。
「ようかん」と「くうかん」の相乗効果でリフレッシュできます。
普段のお茶の時間も、こんなふうに丁寧にすごせたらと思う。
お気に入りの場所でお茶菓子と共に。

話はさかのぼって、新潟へUターンしてきた時期にうれしかったことのひとつ。
こちらではお茶やコーヒーといっしょに何らかお茶菓子を出してくれる人がとても多い。
ちょっとした用件で伺った時でも、2杯3杯と長居をしてしまう。
あたりまえの習慣として自然とうけつがれている事に感動。
住宅の現場でもしかり。
大工たちは「いっぷく」の時用に、ちゃんとお茶菓子も用意している。
大切にしたい「文化」のひとつです。

お湯と急須が別々に出てくるので、3杯くらい楽しめます。
コーヒーのおともにこれ意外と合います「たなべのかりんと」

この建物な〜んだ?

答:深川不動堂。
お寺です。
それも本堂。
右の伝統建築ではなく左の四角いやつですよ。
かっての場末の映画館か演芸場とイメージがだぶる。
実際この中でおこなう護摩の儀式は、まさにパフォーミングアート的なのだけれど。
建築として○か×か判定はいかに。

空中エキナカ広場

もう一つ関西ねたです。
JR大阪駅のホームの上に出現した空中エキナカ広場。
線路をはさんで両サイドに分断されていた百貨店を地上6階レベルの広場でつないじゃう。
これって結構大胆です。
屋根のデザインはネタバレぎみですが、線路方向にスカーッと視線が開けるので新鮮な空間が体験できました。

F.L.ライトとポルシェ

私用で大阪へ出かけた折、六甲山裾の住宅街を散歩してきました。
目的のひとつは、F.L.ライトの「ヨドコウ迎賓館」。
実にライトらしいすばらしい建築です。
詳しくは http://www.yodoko.co.jp/geihinkan/

最近こういう見学をすると近現代建築の保存の事に頭がいってしまいます。
この建物は幸い??国の重要文化財の指定をうけているので、大規模な保存改修が実施されています。
しかしそういった物はごく少数で、さきの東京(大阪も)郵便局や虚白庵(白井晟一邸)など、保存する価値のあるものでも、経済的な環境がそれを極めて困難にしているという現実は、なんと悲しいことか。

帰りみち、立ち寄ったパン屋のカフェ。
それらしい色のビンテージポルシェが店の前にとまりました。
途方も無い維持費がかかっているはずですが、乗り続ける崇高な精神。
かってにビンテージ建築の話と同調させつつ、まだまだ火はきえていないよなと。

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